1.モーメントを意識した広告戦略
モーメントマーケティングとは、消費者が、「今まさに、欲しい(買いたい)」などと感じ、意識の変わった特定の瞬間(モーメント)に合わせて効果的なメッセージを届けるマーケティング手法です。
行動や関心が瞬時に変化する現代では、単に広く伝える広告よりも、「今この瞬間」に響く情報設計が重要視されています。
こうした背景から、モーメントを捉えた精度の高いマーケティングが注目を集めています。
特に注目すべきは、広告の接触場所をどこに設定するかという点です。
例えば、アルコール飲料購入ユーザーをターゲットとした際、仕事終わりの駅構内やスーパーでの訴求は、「今すぐにでも買って帰ろう」という衝動を喚起しやすくなります。
一方で、自宅では今すぐの購入にはつながりにくいため、広告の接触場所をどこに設定するかの重要性がより際立ちます。
さらに、オンライン購買が拡大する中でも、経済産業省の調査によれば、物販の約9割は依然としてオフラインで行われています。
消費者がリアル店舗を訪れる背景には、Googleが提唱する「快適性」「迅速性」「実体験」「お試し」の4つの動機があります。
快適な買い物環境や、すぐに商品を手に入れられるスピード感は、オンラインでは代替しづらい魅力です。
また、実際に商品を手に取り質感やサイズ感を確かめられる実体験、購入前に試すことができる安心感も、消費者の購買行動を後押ししています。
こうした背景を踏まえると、今後の広告戦略においては、単なる露出の多さではなく、ユーザーの生活導線に沿った「場」と「瞬間(タイミング)」での両軸設計が求められます。
そこで、モーメントを捉えた広告は、ユーザーの記憶に残りやすく、ブランドと生活者との間により強固な関係を築く手段として、ますます重要性を増しています。
デジタル広告が日常に浸透する一方で、あらためて注目されているのがオフラインならではの空間を生かした“体験型プロモーション”です。
<体験型プロモーションの特徴>
・商品の魅力を直接訴求
・顧客との深いエンゲージメント
・体験を通じて感情的なつながりを構築し、ブランドロイヤルティが向上
・口コミ効果の促進・消費者がSNSや口コミで体験を共有し、プロモーションの範囲が拡大
2.銭湯特化型デジタルサイネージの可能性
モーメントマーケティングやオフライン空間を生かした“体験”の観点からも近年注目されているのが、銭湯という空間に着目した銭湯特化型デジタルサイネージです。
生活者が心身ともにリラックスし、情報を受け取りやすい状態にある「銭湯」での広告体験は、従来の屋外広告や交通広告とは異なるアプローチを可能にします。
この分野において先駆的な取り組みを進めているのが、株式会社SENSEによる「ふろマド」です。
2-1.「ふろマド」とは?

「ふろマド」は、銭湯という特有のロケーションに焦点を当てた、日本初の銭湯特化型デジタルサイネージメディアです。
全国の銭湯に設置が進んでおり、現在は55施設に展開、最大で60万人以上へのリーチが可能とされています。
<ふろマドの特徴>
・ユーザーの行動や心理状態に沿って、広告接触の“質”を高めている
・スマートフォンが使えない環境での広告接触を図れる
・体験型プロモーションとの親和性が高い
・銭湯ならではのゾーニングによる最適化広告の配信が可能
ユーザーの行動や心理状態に沿って、広告接触の“質”を高めている
多くの広告は「オンモード(仕事・移動・作業中)」の生活者に接触しますが、ふろマドは「オフモード(休息・癒し・思考整理中)」のユーザーにアプローチします。
この“オフ”の瞬間は、心身ともにリラックスしており、ブランドへの共感や受け入れが生まれやすい貴重なタイミングなのです。
また、ふろマドの映像は、施設の空間デザインに馴染むよう設計されており、強制的な印象を与えません。
その結果、「押しつけられる広告」ではなく、「自然に目に入るコンテンツ」として受け止められやすく、ネガティブな印象を回避できています。
スマートフォンが使えない環境での広告接触を図れる
ふろマドは、設置場所は脱衣所やドライヤー前など「スマートフォンが使えない」かつ「滞在時間が長い」環境で広告を届けられる数少ないメディアのひとつです。
つまり、他の情報に気を取られにくく、純粋にコンテンツへ集中してもらえるという強みを持っています。
現代の広告環境において、これほど「情報ノイズ」の少ない接点は極めて稀です。
体験型プロモーションとの親和性が高い
銭湯を訪れるユーザーは、心身ともにリラックスしており、体験を受け入れやすい心理状態です。
例えば、風呂あがりのタイミングで飲料の試供品を配布することで、製品に対する好印象や試用意欲が高まり、自然な購買行動へつながりやすくなります。
他にも、空間ジャックやコラボ湯などで、ユーザー自身が写真や動画を撮ってSNSでシェアしたくなるようなビジュアル演出も可能です。
「◯◯とコラボ中の銭湯に行ってきた!」という投稿は、自然な形でのクチコミ拡散になり、広告のリーチを広げることができます。
銭湯ならではのゾーニングによる最適化広告の配信が可能

性別ごとのゾーニングによって、男性向け・女性向けそれぞれに最適化された広告の配信も可能です。
Cookie規制が進む中で、こうした空間ベースのセグメントは、今後さらに注目されていくでしょう。
将来的にはPOSシステムとの連携や購買データを活用した施策展開も視野に入れており、「見せる」だけでなく「動かす」広告への進化が期待されます。
2-2.デジタルサイネージが実現する新しい空間プロモーションの形
デジタルサイネージの本質は「画面を置くこと」ではなく、「空間体験を変えること」にあります。
銭湯という非日常的で感性が研ぎ澄まされる場所に、自然なかたちでメッセージを届けることができれば、従来の広告以上に深い印象を残すことが可能になります。
ふろマドは、まさにそうした「空間×タイミング」の融合を具現化したメディアです。
この文脈で注目すべきなのが、いわゆる“体験型プロモーション”との相性です。

たとえば、タッチアンドトライやサンプリング、のれんやロッカーを活用した空間ジャックといった手法は、実際に商品を手に取り、感じてもらうことが前提です。
これらを銭湯という場で行うことで、より印象的なブランド体験を創出することができます。
言い換えれば、「ふろマドで出会った広告」は、ただの視覚体験にとどまらず、行動の引き金として機能しているのです。
こうしたプロモーションは、SNSや口コミによる波及効果も生みやすく、銭湯というローカルな場所から全国規模の話題化へとつながる可能性も秘めています。
加えて、地域性や時間帯、施設特性に応じた柔軟な設計が可能であるため、広告主にとってはメッセージの最適化を図りやすいメディアでもあります。
ふろマドは、単なるデジタルサイネージにとどまりません。
銭湯という文化と、企業メッセージとをつなぐ“橋渡し”のような存在として、広告主・生活者・施設それぞれに価値を提供するメディアとして成長を続けています。
広告が“邪魔”ではなく“体験”として歓迎される社会へ──ふろマドが示すのは、そんな広告の理想的なあり方かもしれません。
3.広告は”伝える”から“寄り添う”時代へ
今回のセミナーでは、「モーメントマーケティング」の本質と、それを体現する事例として「ふろマド」をご紹介しました。
情報が飽和し、生活者の可処分時間が細分化される現代で、私たちが取り組むべきは、単に「見せる」広告ではなく、“伝わる”広告を設計していくことではないかとあらためて感じています。
特に銭湯という空間は、現代において希少な“オフの時間”が流れる場所です。
デジタルから少し距離を置いたその時間は、生活者の感受性が開かれる瞬間でもあります。
ふろマドは、広告主にとってはこれまでにないシーンでのリーチを、銭湯施設には新たな収益源を、そして利用者には自然で心地よい情報接触体験を提供しています。
三者すべてにとっての価値創出が可能であるという点は、今後の広告メディアの在り方を示す一つの指標になると考えています。
ふろマドをはじめとしたモーメントマーケティングを活用したメディアは、単なる“情報の提供”にとどまらず、広告と生活者との関係を、より深く、より意味のあるものへと変えていく可能性を秘めています。
以上、ウェビナー「モーメントを捉えた広告戦略とは?大手消費財メーカーも取り組んでいる日本初の銭湯特化型デジタルサイネージ活用法」のレポートとなります。
本編視聴はこちらより可能です!
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デジタルOOHアドネットワーク事業およびCMS開発・運用事業を行う、株式会社MADS(東京都渋谷区 代表取締役:穴原 誠一郎、以下MADS)は、全国のあらゆる生活動線上にある各種施設や店舗のサイネージやタブレットをネットワーク化、一元管理を行っており、デジタルの仕組みを活用し、地域、曜日、時間、気象条件など任意の条件で期間もしくはインプレッション単位の広告配信を行っています。
また独自の効果測定により、継続的に広告効果を改善していきます。
■株式会社SENSE
主に銭湯特化型デジタルサイネージ事業、温浴施設を中心としたイベントプロデュースやサウナグッズ、OEMなどの製造などを展開している。
歴史・文化が集約されている地域の憩いの場である銭湯や温浴施設と企業の橋渡し役として、新たな付加価値のあるサービスを提供したいと思っております。

-「ふろマド」について
銭湯という特有のロケーションに焦点を当てた、日本初の銭湯特化型デジタルサイネージメディア。
ふろマドについての詳細はこちら。