■TVCMの役割
マス文脈においては、消費者の認識に気づきを与えることです。
単に知られるだけだと、消費者は動きません。
強烈なクリエイティブにより、認知の母数が図れ、それが無条件で購買に向くといったことは今や皆無です。情報が非常に少ない時代、TVが唯一無二の媒体であった時代は、CM自体が巨大なコンテンツであり、類似例がない表現が消費者を動かしていました。
現在はその表現においては「市場創造の要諦であり、属性順位転換を行う表現」である必要があります。つまり「良い◯◯」の定義を作るためのコミュニケーション接点である必要があるのです。
それを最大公約数的に消費者に伝える手段としてTVという媒体を上手く活用している企業は強く、成長し続けています。
デジタル広告においては、パーソナライゼーションによりコスト効率が高い出稿が高い事実がありますが、短時間で大人数にリーチする上ではTVは必要不可欠のメディアとなります。
※総務省のデータによると、40代以上は未だにネットよりTVへの接触時間の方が多い
■コミュニケーションの具体例
消費者の7段階の認識の変異と、そこの対するコミュニケーションのパターンをお伝えします。
①
「人の家に行くと、その家の匂いを感じることがある。自分の家でもどうなのかな
でも消臭剤があるから大丈夫であろう。」
⇒旅行から帰った時など玄関が臭ったことってありませんか?
②
「そういえば、そんなこと先月感じたな。何かしたほうが良いのかな。」
⇒空気の匂いは布製品の繊維から少しずつ空気中に出てくるため、しばらく留守にしていると部屋が臭うのです。
③
「原因は布だったのか。空気の匂いだけだと一時的な解決にしかならないのね。」
⇒布の匂いを取ることで、匂いは空気に戻ってきません。他の香りの邪魔もしません。
④
「では布の匂い対策をしないと。家にいる時間も長いし。でもどうしよう?」
⇒ファブリーズなら室内の洗いにくい布製品の匂いを取り除きます!
⑤
「ファブリーズで解決できるのね。でも生地が傷んだり、ペットへの害が心配。」
⇒主成分がトウモウロコシ由来、布にも肌にも、ペットにも安心。しかもスーツにも使えます。
⑥
「それなら安心。用途が多いから無駄な買い物にもなりにくい」
⇒洗濯関連商品売り場にあります。
⑦
「今度買ってみよう」
⇒布が臭う!そんな時は布にプシュッと!ファブリーズ(店頭販促物、サイネージ)
⑧
「見つけた!試しに買おう!」
■広告会社様と関わり合い方
広告会社は総じて「それなり」の提案を行うことが得意です。
ただ、それ以上に、広告主様側のリテラシーが低いと効果的なCMが仕上がりにくいです。
<オリエン(ブリーフィング)のポイント>
一次オリエンの場合は以下のようなことをまず伝えると良いでしょう。
✓想定時期
✓想定期間
✓想定予算
✓目指すべき消費者の認識への気づき、行動
✓現状の消費者の認識と状態
✓コミュニケーション後の消費者の認識と状態
✓ターゲット(複数あっても良い)
✓インサイト(自発的に明示しにくい、無意識や本年、現在の行動を促している動機)
✓とんまな(トーン&マナー)
✓KPI(名称認知率なのか、内容理解率なのか指名検索数なのか)
✓伝えるべき要素(便益|ビジョン|機能|社会的)
✓備考(こうしたいではなく、こうはしたくない)
など
リスクがあるのが、クライアント主観の内容になってしまうことです。
その場合は、課題感と目的の2点を、まずはざっくばらんと話しながら、正式なオリエンが出来るようにしていくと良いでしょう。
また広告会社主導になりがちなTVCMは属人的な部分もあり、ブラックボックスなことも多くあります。そういうものだと言われてしまうと納得してしまいます。そこも広告主が高いリテラシーを持ち、優位な交渉やオリエンが出来ると、より競合に対して優位な結果を出せるでしょう。
クリエイティブ、バイイング、プランニング、周辺知見
全ての要素が効果最大化のためには必要です。
<TVCM出稿において抑えておく要素>
■プランニングのポイント
✓ターゲット含有率が高い曜日時間、番組か
✓出稿ボリュームは目的を達成する上で適切な量(GRP)か
✓出稿する曜日時間=線引(絵柄)は全日、コの字など、既存の型ではめ込んでいないか
✓出稿するエリアは適切か
✓出稿期間(週単位)に対して一日あたりのGRPは適切なフリークエンシーを担保さえれているか
■バイイングのポイント
✓競合の出稿時期を予め把握した上で、出稿タイミングを策定しているか
✓GRP(視聴率×視聴数)の単価は適切か
※TVCMのスポット単価には原価が存在しないため、全く同じ条件でも2倍以上差があるのが実態です
✓アクチュアル(実際放映されたGRP)は、どこまで保証、コミットしてもらえるか(平均75%程度)
✓複数の局を活用しユニークリーチを最大化できているか
✓パブリシリティの仕込みも同時に行えているか
■クリエイティブのポイント
✓一方的な企業の言いたいことだけを伝えていないか
✓目ではなく音だけでも何か分かる表現になっているか(ながら見が多いため)
✓クリエイティブは何本制作するか、それは別訴求でパーセプションチェンジを促す目的か、ABテストとして利用するものか
✓15秒ないし、30秒の視聴後に一つだけ残っている記憶、印象が企業の目的と合致しているか
✓無闇にタレント依存で、商品便益が伝わらないということが無いか
訴求は◯◯訴求と「点」で発想しても、属人化になるため顧客の状態を元に表現を設計する
15秒であれば15秒後にどんな印象を顧客に与えられたかが成果へ直結する
■その他
✓効果測定をどのようなツールで行うのか
(視聴時間にCVされた、だと片手落ちの効果測定にしかなりません)
例えば、CM視聴状況にいてアクションを起こしたかどうかまで測定することが重要です。
なお、TVCMは魔法でも何でも無く、あくまでコミュニケーションのイチ手段のため、広告予算があればCM出稿できて、売上や利益も伸びるのに!という考えのだと安直です。
あくまで、Who・What・Howを策定しつつ、必要に応じて、マスメディアが必要と判断した際に、TVCMを中心に、TVer、ABEMAなどのコネクティッドTVなどへの出稿を検討できると良いでしょう。
MADSでは総合代理店のトップチームと協業し、消費財領域を中心としたTVCM等の支援も行っています。