クリエイティブは重要なWhatでありHowである
「ターゲット顧客=Who」
伝える相手が誰かにより、伝えるべき内容は全く変わってきます
クリエイティブが独り歩きにならないように、伝えるべき相手は誰かの理解から始めましょう
「何を伝えるか=What」
伝えるべき相手が誰かが設計できたら、その人に何をどうしたいかのセットで何を伝えるべきか、を考えます。複数のタイプ(ペルソナ)がいれば、その複数のタイプ毎に伝えるべき内容が変わってきます。
「それをどう伝えるか=How」
誰に対して何を伝えるべきかまで設計できて、初めて、それを「どのメディアで」「いつ」「どういった表現で」「どれくらいの量と頻度」で伝えるべきかの議論が発生します。動画が良いのかテキストが良いのか、短尺が良いのか長尺が良いのか、はあくまでフォーマットであり、そのフォーマットから入らないような留意が必要となります。
消費行動モデル毎のクリエイティブの方向性
まず一般的な消費行動モデルに合わせて伝えるメッセージはどう考えるべきでしょう。
まず前提としてカテゴリ(ジャンル)の認知があるかどうか、の状態によりコミュニケーションは変わってきます。
既に認知があるカテゴリであれば、そのカテゴリの中で自社商品の便益、ユニークさを伝えれば良いですが、カテゴリ自体に認知がない場合には、その商品のことを伝えても、前提認知も理解もないため、消費者は反応できません。
<例:認知されているカテゴリ>
リスティング広告
→Google、Yahoo!というそれぞれのサービスの特徴に触れる
日焼け止め
→各社の日焼け止めの独自性と便益を伝える
ノートPC
→各社の機能スペック、購入することで仕事やプライベートがどう変わるかを伝える
<例:認知されきっていないカテゴリ>
AIカメラ
→自社商品そのものより、まずAIカメラが通常のカメラとどう違うかの優位性を伝える
ウォータートリートメント
→通常のトリートメントと異なる優位性を伝える
デジタルOOH
→サービスの特徴に触れる前に、デジタルOOHの特徴に触れる
認知されきっていないカテゴリであっても、特定の業界や情報感度の高い消費者は認知している場合があります。その場合は、その人に対するコミュニケーションのみに集中しても問題ありません。要は、ターゲットとする人たちが、そのカテゴリにおいて、どれくらいの認知が獲得できているかを把握し、その上で伝えるメッセージを考えるべきであるということです。
下記はカテゴリ認知の度合いによる訴求のポイントです。
訴求軸の考え方
良く訴求軸という言葉を耳にします。ただ闇雲に「◯◯訴求」を点で発想してしまうケースが多くあります。そして企業の担当者によっては属人化しているケースも見受けられます。前提として、誰に何を伝えるかと合わせて、その顧客の状態やBtoBであればその企業の役職や部署によっても、表現を設計する必要があります。
例えば新型iPhoneの発売(当時)において、既存iPhoneユーザー には新機能による便益訴求となりますし、AndroidユーザーにはIPhoneそのものの優位性の訴求、ガラケーユーザーには、そもそもスマートフォンの優位性の訴求をする必要があります。
各訴求を整理する際の制作設計の構図が以下となります。
上記でまず重要なのが、消費者便益(Benefit)です。
よくあるケースとして「こんなことができる」という機能そのものを伝えることです。
BtoBプロダクトに多い傾向にあります。
その機能が何を解決してくれるのか、そこがまったく無いまま、機能を伝えたところで、顧客は反応してくれません(例えば陸上のスパイクの軽さのように「機能=顧客便益」に直結するものであれば問題ありませんが、そのような例はむしろ少ないです)。
例えば、食器洗浄機の機能は一定時間で食器の洗浄・すすぎ・乾燥まで行ってくれるものですが、顧客が解決したい本来の課題は多くの主婦や家事を担当する者の一日の時間を約30分他のことに使えることです。これが便益(ベネフィット)です。
今は当たり前ですが、食器洗浄機は発売された当初、機能訴求の広告でイマイチ反応がなかった際に、時間短縮を謳った訴求に変えたところ、売上が一気に上がりました。
別の例だと、オンライン会議ツールのZoomの機能は数多ありますが、オンラインで会議や商談が出来る機能ではなく、どんな場所にいてもコミュニケーションが行えること。地方企業への営業活動においては移動時間と新幹線代が不要になる、録画が行えるため日報が要らなくなるというところにあります。
まず、認知フェーズ、ターゲットの属性に対して、消費者便益(Benefit)が何であるか、それを表現するためにはどういったフォーマットや型が適切かを考えていくことで、仮説を元にしたクリエイティブが出来上がります。
メディアによって使うべきクリエイティブは異なるとは限りません、あくまでそのメディア特性に合わせるというセオリーもあれば、複数メディアに消費者は接触するため、クリエイティブにおけるとんまなを合わせるために、幹となる訴求を保ったまま、枝となる表現方法は変えるという考えもあります。
その上で、実は知っておくと良いというポイントをいくつかのメディアを例に解説します。
<TV>
・ながら見による強制視聴
・視聴者は見るだけだけではなく、聞く視聴態度のため、音も重要な要素
・一定層においては信頼性が高いメディアでありマス的メッセージの手段として有効
・スポット15秒であれば、15秒後に視聴者が何を感じるかを意思したメッセージが重要(色々盛り込みすぎない)
※そもそもプランニングやコネクティットTVを通じたOTTによりターゲティング別のクリエイティブの出し分けも可能
<新聞>
・読むことを前提としたコミュニケーションが有効
・社会的文脈のメッセージが有効
・単なる広告クリエイティブではなく、有識者との対談記事稿、純広、広告自体が話題になりやすいPR文脈のクリエイティブも有効
<専門メディア>
・専門的な表現があえてターゲットに対する信頼度が増すため、専門用語をあえて使うことも有効
・未認知サービスであれば、その業界に有識者を絡めたタイアップ文脈で、お墨付きを得ることも有効
<SNSメディア>
・動画をフォーマットで利用する場合、メディア特性を理解した尺や表現が重要
・単純な一方的なメッセージではなく、インフルエンサー、クリエイターの活用も含めた表現を検討
・企業本位ではなく、必然と共感を得て、回りに必然と共有したい文脈のクリエイティブが有効
・タイムラインやショートムービーは瞬間的に伝わる内容とすることが重要
<タクシー>
・22時以降は強制音声オフのため、音ではなく、見て伝わるクリエイティブが重要
(TVCMの流用であれば字幕は必須)
・乗車する人は広告を見たいわけではないため、宣伝色が強いメッセージは場合によっては逆効果になり得るので注意が必要
・尺が30秒と長いためある程度のストーリー性があるクリエイティブが有効
タレント起用の是非
特に日本においてはクリエイティブにタレントを起用することは積極的です。
タレントを起用することで、分かりやすく認知させ、ブランドが輝いているように見せるためです。狙うイメージに近しい人が広告塔になれば、売上が上がるという事実もあります。
逆に米国では、ブランド起点の考えが強いため、あくまでブランドのコアな価値を昇華させるためのクリエイティブ開発であり、結果として必要に応じてタレントは起用される状況です。日本と比べ、あらゆるブランドの歴史が長いという背景もあります。
国民性の違いもあり、米国では周りの意見ではなく自身が良いと思えば、それが良く、日本人は皆が良いと思えば、何となく良いであろうと思う傾向にあります。
よってどちらが正解ということではないですが、タレント起用において留意すべき点を4つ挙げます。
①継続性、再現性が少ない
ブランドの一貫性を重視する上で、今の瞬間が旬となり、タレントのイメージがブランドのイメージになり、本来のブランド価値が揺らぐ可能性があります
②商品認知に到達しない
タレント起用の広告は、広告認知スコアが高くなる傾向にあります。有名であればあるほど。ただ、その認知が強すぎて「◯◯さんの出ているCMだよね=広告認知」に偏り「で、何の商品、サービスだっけ=商品認知」に落ちていかない傾向があります。
本来は商品を認知してもらい、その後の行動を促すための広告が広告認知というトップファネルで歩留まりしてしまう現象が起きてしまうのです。
③アーリーアダプターに通用しない
無条件に有名タレントを起用することで話題にもなり、イメージのみで買ってみようかの消費者の購買購買モチベーションは2000年をピークに、徐々に下がっています。
あのタレントもこの商品を使っているから、これは良い商品だの想起は存在しますが、年々消費者のリテラシーも高くなっており、広告の裏側も知っているため、あくまで広告だよね、という見方をされます。SNSや口コミではイマイチ、商品便宜において他社との違いも分かりにくいという状態になっています。
これは特に市場トレンドを牽引していくアーリーアダプターにより強い傾向があるため、場合によっては逆効果にもなりえます。
限られた時間の中で接触する広告(特にマス関連の広告)においては、費用をかけたタレントが、余計な情報として機能してしまう面もあるということを知っておくと良いでしょう。
ABテストの注意点
ABテストは定量評価で良いものを残し、悪かったものを弾く。
その良いもの中でも、訴求を分岐させ最適化を図っているものですが、実は効果が悪いと判断したクリエイティブに関して、なぜ✕だったかの理解も行う必要があります。
例えばWeb広告でいうと単純にCTVRでABを評価するとAに軍配が上がります。
■A
CTR:4.0%|CVR:0.3%
→1.2%
■B
CTR:2.0%|CVR:0.5%
→1.0%
運用型広告においてはこのやり方で運用するのはセオリーですが、Bに反応した顧客が、実はLTVが高い、またはカムバックする可能性もありえます。そのような顧客を切り捨てて、無視してしまったために機会損失が生じる、または顧客の重要なインサイトを見逃す可能性があります。
中期的な指標でもWeb広告起点の定量効果をトラッキングし、LTVまで観測できる状況を作りつつ、なぜ「✕」だったのだろうかという仮説を考察することで、成果に繋がるクリエイティブの精度が上がっていきます。
またクリエイティブの傾向はGoogleやFacebookといった広告媒体においては、アルゴリズムにより、すぐには分かりにくいため、大よそ以下を目安とすると良いでしょう(キャンペーンや、アドグループ、アドセットの使い方によっても異なります)
期間目安(仮):2〜3週間
CV数:最低20以上
効果(KPI):CV数×CPA(CVR×CTR)
差替判断指標:応相談(数日でもあからさまに数値の差が低いものは差替対象となり得る)
ネーミングは重要なコミュニケーション
広告は継続して投資していく必要がありますが、最終的に残るのはネーミングです。
ネーミングが重要であるポイントは以下です。
・各種プロダクトは永続的にコミュニケーション施策、キャンペーンを打てるわけではない
・10万以上の情報に無意識に触れる現代
・人間の集中力は今は金魚以下(金魚:9秒、人間:1.3秒)
ネーミングは消費者に認知され続け、どんな商品か想起される上で、土台になるものです。
このネーミングがあることで、広告クリエイティブがより生きます。
そして、そのネーミングを考えるポイントは4点です。
・ネーミングはプロダクト開発と同時に決める
・ネーミングはあると良いな、話題化の視点から決める
・ネーミングはユーザー、顧客に関係がありそうな視点から決める
・ネーミングは使うイメージを想像できるものにする
例えば「熱さまシート」「ブレスケア」「チキンタルタ」「蚊取り線香」などは、これらに該当する好事例です。
◯コピーの種別と考え方
コーポレートサイト、サービスサイト、TVCMやWeb広告、各種販促物などで、適宜利用するメッセージは異なり、目的に応じて使い分けをする必要があります。そのコピーの種別は一般的に混合して使われてしまっているケースも多くあります。例えば、パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー、タグライン、コンセプト、広告コピーなど定義がままならず、何となく書かれているということですね。
その定義は企業やそれを作る仕事をしているクリエイターにより異なりますが、大きくは3つの種類に分けられます。
定義を定めることが大事というより、言葉として表現する際に、これらに関して社内および外部パートナー(広告代理店、クリエイティブエージェンシー)の中で共通認識を持っておくことが、顧客に対して伝わりやすくなり、マーケティング上のコミュニケーションがスムーズとなります。