今後のリアル店舗における購買促進とは

今後のリアル店舗における購買促進とは

マイケル高橋

2022.10.25

オンライン経由の消費が増えていると言われることもある一方で、リアル店舗の消費や在り方はどうなるのでしょう。

ネットで商品を売ることを基本に、リアル店舗がそれを補完していくという発想で、リアル店舗は価値ある体験の提供の場とし、商品販売はオンラインに誘導するというケースもあります。

事例として、韓国のスーパーマーケット大手「Home Plus」が実施した「SubwayVirtual Store」というキャンペーンは、地下鉄の広告スペースに食品から日用品までの写真をずらりと掲示し、QRコードで購入するとその商品が自宅に届くというものです。これは広告スペースを店舗に変えてしまう発想で、PR戦略でもあります。

ただ、2021年経済産業省の発表によると、日本では、買い物の約9割がリアル店舗で行われているというデータもあり、まだまだリアル店舗が主戦場とも言えます。

リアル店舗の価値や在り方をどう考えていくかは各企業のテーマと言えるでしょう。

リアル店舗とECの考え方

そもそも店舗をどうするか、ECをどうするか、販売チャネルを分けて考えること自体が現代の消費者の思考にそぐわないと考えられます。

消費者にとって、店舗もECも、欲しいモノを手に入れるための手段としての場であり、店舗やEC自体に価値があるわけではありません。

「店舗で情報を得て、オンラインで購入(=ショールーミング)」する場合もあれば「オンラインの情報を元に店舗で購入(=ウェブルーミング)」

ゆえに、消費者の購買行動や欲求を分析し、特定のチャネルに固執せずに顧客便益を高めるクロスチャネルや導線間のコミュニケーション視点が必要です。Webと店舗で共通のポイント、来店顧客のデジタル会員化による1on1の情報提供なども一つの手段です。

ちなみに、ウェブルーミングの割合の方が、若干多いというデータが存在します。

購買行動パターンとリアル店舗の関係性

消費者の購買行動パターンにより、リアル店舗の関わり方を整理してみましょう。

(1)自動的な購買パターン

ECで水を買い、宅配で受け取る生活をしている人は「買うことを忘れる」「自宅不在で受け取れない」ことがリスクです。

「気づいたら手元に補充されている状態」を得るために、買い忘れにはAIが対応し、最安値で早く配送してくれることが出来るようになるでしょう。

こちらは、EC主導のためリアル店舗が直接入り込むことは少ないでしょう。

(2)即時的な購買パターン

今すぐ必要かつ拘りがない商品の場合、商品の評価をWebで調べてから安く買いたいというものではなく、緊急性があり「いま欲しい、必要な商品を最短で手元に置きたい」というものです。

「事務用品・文房具・一部の生活用品」など、比較的単機能で品質的にも大きな差異が認められない商品に多いケースがあります。

こちらは、出来るだけ近い場所にある、コンビニ、ドラックストアの品揃えやサービス、即時配達手段も含めたリアル店舗の需要があります。

(3)日常的な購買パターン

毎日とは言わないまでも食材、生活用品を買いにスーパー、ドラックストアなどに行きます。例えば、献立を考えて食材を買う場合もありますが、食材を見ながら献立を考えたり、定常的に買うものを無意識に手に取ったりしています。、欲しいものを効率良く買いたい一方で、想定していない商品に対する出合いに期待する気持ちが混在しています。

デジタルと連携した購買プラットフォームでは、行きつけの店舗の食材在庫が確認でき、それが店舗のどこにあるのか表示され、または食材をスマホで購入予約し、取り置きも可能となるでしょう。

効率と予期せぬ刺激の混在の期待により、商品にモバイル端末を近づけたり、いつもの購買データより、AIによる食材を使ったメニューの提示や、消費者にとってのリコメンド商品の提案がされていくでしょう。

こちらは、リアル店舗がデジタルの仕組みをいかに活用するかがポイントになります。

(4)現物を確認する購買パターン

実物に触れて買いたい、予期せぬ出合いや購買体験自体が楽しいという消費者が存在します。
実物商品を店舗に見にきている消費者は購買前提ですが慎重な性格でもあり、Webの情報や口コミ以上に、店舗に行けば、より良い商品があると思う、専門家に相談したい、デザインや質感も含め、自身の主観による情緒的判断をしたいと考えています。最安値よりも、その場で持って帰れる、その場のリアルコミュニケーションを通じて買うものの価値を確信できる、ということを付加価値としても捉えています。

特に、アパレル、食品、家具、自動車、家電などにその傾向が見られます。

購入した後の店舗サポートやアフターサービス、相談室の提供も含め、まだまだリアル店舗が工夫出来る余地はあると言えます。

購買心理と商品特性

予め購入することを計画していなかった「非計画購買」を促すことが、より今後のリアル店舗における購買を促すポイントとなります。そこで非計画購買における購買心理と商品特性を整理してみます。

(1)想起購買

特に「季節性の強い商品」が該当すると言えます。
購入する必要がある商品をインパクトの強い店頭ディスプレイなどで想起して購入するケースが多く見受けられます。
(例:インフルエンザ、コロナ予防のうがい薬、マスク|大掃除用の洗剤|花粉対策・日焼け止めなど)

(2)関連購買

購入した他の商品との関連性が強く「ついで買い」を促す施策で、特に「食品売り場での一体陳列」などに多く見受けられます。
(例:食材に合う調味料、ドレッシング、調理用具|便利グッズなど)

(3)条件購買

差し迫って購入する必然性はないが「おトク感が強く感じられ」購入する場合で、特に生活必需品に多い傾向があります。
(例:タイムセールス|キャンペーン|ポイント還元|特価品|数量限定特価など)

(4)気分購買

理性で検討するのではなく、「気分で思わず購入」してしまう場合で、特に五感に訴える商材が多く見受けられます 。
(例:実演販売商品/ショーウィンドウの衣服など)

(5)推奨購買

課題があるが、それを解決する商品が分からず、その悩みを、スタッフ、専門員とのコミュニケーションを通じ、その推奨を元に総合的に判断し購買するケースです。
(例:カテゴリ認知がされていない商品など)

リアル店舗における購買効果の向上

売上全体は諸説ありますが、原則、下記の掛け算が成立し、マーケティングで解決できる部分と、そうでない部分があります(そもそも企業によりマーケティング、広告宣伝、販売促進など役割の定義が様々)

人口(来店者数)×認知率×来店者数×購入率×購入個数×購入頻度×購入単価×店舗生産性

購入頻度や個数は限界はありますが、自社商品を優先的に選んでもらうべく、認知率は計画購買に寄与しやすく、購入率は、特に非計画購買において重要です。

そしてそれには店頭と店内コミュニケーションが重要となります。

その要素とポイントが5つあります。

演出:商品の存在や便益を認識できるきっかけが作れていること

陳列:商品が消費者の目に入る位置、場所であること

情報:商品のパッケージ、コピー、利用イメージの認識と理解が優れていること

商品:他商品に比べ、消費者が価値を感じる独自の機能、役割、強みがあること

価格:ブランド選好を高めながら許される範囲の価値対価であること

価格、商品、情報は企業の開発、販売促進、広告宣伝、マーケティング部門に依存します。値引きにおける価格や、陳列などは店舗に一定依存する部分もあります。

演出に関しては、工夫の余地が残されています。店舗において商品に到達する寸前に、何かしらのコミュニケーションを顧客とできるかが重要です。

人的に全ての顧客と触れることは原則難しいですし、たまたま立ち寄った店舗においては、店舗スタッフに介入されたくないという心理も発生します。

これらの演出はいままで十分な認知していなかった商品でも、初めて認知させるきっかけにもなり、例えばTVCMで認知していたが、購入意欲まで至っていなかった場合の再認知にもなり「想起購買」「関連購買」「条件購買」「気分購買」「推奨購買」といった非計画購買に寄与する手段となり得えます。

具体的な手段として、トップボードや各種POP(Point Of Purchase Advertising)が演出において、一般的に用いられる手段ですが、一定実コストや、物流オペレーションが発生したり、差し替えも工数がかかります。

そこで店舗におけるタブレットやサイネージという媒体を通じ、商品における何かしらの情報を与えることは昨今非常に効率、効果両面において有効となっています。

タイムリーに顧客の反応を見たり、気象条件によってクリエイティブを差し替えるといったことも可能であるため「顧客の今」にアプローチができます。さらに、デジタル配信のため、オペレーションも簡易的です。

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マイケル高橋

マイケル高橋

株式会社MADS CMO。マスマーケティング、コミュニケーションデザインを主軸とし、上場企業の顧問等も担う。Google SaaS Day 2020年登壇。NIKKEI BtoBマーケティングアワードファイナリスト。

株式会社MADS CMO。マスマーケティング、コミュニケーションデザインを主軸とし、上場企業の顧問等も担う。Google SaaS Day 2020年登壇。NIKKEI BtoBマーケティングアワードファイナリスト。

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