タクシーサイネージ広告の出稿ノウハウ

タクシーサイネージ広告の出稿ノウハウ

マイケル高橋

2024.05.10

多くの方が馴染みのあるタクシーサイネージ広告ですが、意外と奥が深く、出稿方法次第で予算に対するリターンが大きく変わってきます。

情報の流通も決して多くはないタクシーサイネージ広告に関して、今回はあらゆる角度から深掘りして、出稿のノウハウを解説してまいります。

タクシーサイネージ広告の現状

配車アプリの普及やコロナ禍より十分な回復を遂げ、急成長を遂げているのがタクシーサイネージ広告市場です。まずタクシーを含むデジタルサイネージ広告市場は2025年に1,000億を超え、2027年には約1,400億に到達する見込みです。

タクシーサイネージ広告の規模として接触する述べリーチは月間4,270万人で、台数は以下の通りです。

全国:230,000台
サイネージ設置台数:81,500台

東京:約50,000台
サイネージ設置台数:37,000台

コロナ禍で、一時的にタクシーサイネージ広告は出稿量が減りましたが、2024年現在、出稿量はコロナ禍の2020年当時を凌ぐほどになっています。

タクシー広告の媒体社とメニュー

タクシー広告媒体には大きく2つあります。
KM(国際自動車)や大和自動車交通を中心とした都内に強いネットワークであるGROWTH(運用企業:株式会社ニューステクノロジー)と、東京交通を中心とした全国にネットワークを持つTokyoPrime(運用企業:株式会社IRIS)です。

タクシー配車アプリでも分かれており「S.RIDE」で呼べるタクシーの広告メディアはGROWTHで、「GO」で呼べものがTokyoPrimeとなります。

タクシー会社、配車アプリの違いはあるものの、基本は両者類似しています。
GROWTHは15.6ؕインチとサイネージが大型で、TokyoPrimeはGOの属性を活用したターゲティング配信の
広告メニューがあるなど、それぞれユニークさも持ち得ています。

タクシー広告の種類

タクシー広告は各社色々なメニューを出していますが、基本大きくは3つに分類されます。

デジタルサイネージ(CM動画)
乗車中に流れる60秒や30秒のCM動画広告です

タイアップ動画
メディアのコンテンツとして媒体やビジネスメディアとタイアップをし、動画として流す広告です

車窓広告・ラッピング
タクシー内ではなく、非乗車ユーザーにも見える車外面広告です

▼イメージ

どういった課題がある企業が出稿すべきか(出稿理由)

平均20分弱の乗車時間において、高い視認率が担保できることが
評価されているタクシーサイネージ広告。その出稿理由を分類すると5つ程度となります。

①可処分所得が高い属性へリーチ
可処分所得が高いユーザー、ビジネスパーソン、法人向けにリーチしたい、特に東京都内にターゲットの含有率が多い場合

②数百万単位でCM動画をテスト出稿
マス的なコミュニケーションを図りたいが、TVCMを関東で実施する予算は無い、CM素材を数百万単位でテスト出稿したい、その後タクシーサイネージで一定の影響が出た場合にTVCMを出稿したい、といった場合

③確実な認知獲得
移動時間中の専念視聴環境(視聴完了率90%と言われている)で、30秒の尺で動画というフォーマットでコミュニケーションを取り、確実にユーザー認知〜理解を図りたい場合。

④TVCMに合わせたリーチ最大化
TVCMのみだと、ノンテレ層にはリーチが出来ないため、あらゆるメディアに接点を持ちつつフリークエンシーを高めたい場合。

⑤より短期間で高い認知を図りたい
限られた時間で商品、サービス認知を一気に図りたい。期間限定のキャンペーンを大々的に実施する場合。

タクシーサイネージ広告のメリット、デメリット

タクシーサイネージ広告はマスメディアにはなりきれないですが、それでも同じ環境で代替手段が他には無い広告メディアであります。よりメリット、デメリットを把握した上で出稿することをオススメします。

平均数百万〜数千万円(100万円〜出稿は可能)の投資となるため、クリエイティブもセットで目的を果たせるようなプランニング〜クリエイションとなるようにしましょう。

BtoB企業とBtoC企業、どちらがタクシー広告には向いているか?

タクシーサイネージ広告はtoB企業の出稿イメージがありますが、実際はtoC企業の出稿にも十分向いています。

両媒体とも管理職が70%以上、年収1,000万円以上のユーザーはタクシー利用者が非利用者の2.8倍という両媒体のデータがあります。

大前提、可処分所得が高い人が多い消費者がタクシーを利用しており、
結果として管理職という役割の方が多いため、そこにフォーカスしてtoBのイメージがあるのです。

toBに効率的にあるものの、toC企業の出稿においても選択できるメディアです。

タクシー広告におけるKPIとは

企業におけるKPIは様々です。

まずは名称認知を狙うケースが多いです。ブランドサーベイを通じてサービス名の認知、想起や間接指標として指名検索数を見たりします。

次に名称認知に加えて、その結果として顧客のサービスや商品に対する 新規問い合わせ数、
ロイヤリティ(LTVが高い顧客率)の割合を見ます。toBであれば商談率や受注率を見るケースが多いです。
それも名称を認知した後のファネルとして、一定の理解〜興味関心が発生するために起こり得るものなので、ターゲットにサービス、商品便益が伝わったかどうかの理解度を見ることも重要です。

目先の反響が上がったとしても、最終的に顧客にならないとお互いにとって不要な反響という結果になってしまいます。

最適な出稿期間は

まず前提として、広告接触回数(フリークエンシー)が、5〜6回になると広告認知は50%を超えます。
フリークエンシーが6回以上となっても、しばらく広告認知は上昇し続けますが、
効率の面だと5〜6回程度が適切といえます。

態度変容に必要なフリークエンシーは一般的には既存認知ブランドは3〜4回、誰も知らないカテゴリ商品などは10〜12回程度となります。その差は大きいですが、最低でも5〜6回の接触はあると良いと言えます。

次に、弊社独自調査の結果、タクシーサイネージにおいては、一定効果が出やすい
フリークエンシー(6〜7回)に達する出稿期間が、広告枠の掲出場所にもよりますが、累計で3週間以上となります。

必ずしも、3週間である必要はありませんが、可能であれば一定期間の出稿をおすすめします。
(乗車直後枠であれば2週間でも5回を超えるため、広告メニューにとっては2週間でも影響があります)

媒体別の出稿活用

両媒体どちらに出稿するべきか、
こちらは必ずしもどちらが良いとは言い難いですが、うまく両社を使うことを推奨します。

どちらの媒体が反応が良かったかを見る場合には例えば
「GROWTH」を1クール実施、その後「TokyoPrime」を1クール実施
結果が良かった「GROWTH」もしくは「TokyoPrime」を3クール目で実施というパターンです。

ただ初期認知を取った媒体が、次に出稿する媒体に影響を及ぼすことがあるため、正確に測定するのは難しい部分もあります。

異なる角度から解説すると、特定のタクシー会社と法人契約をして企業が存在するため、物理的に、どちらかのみに偏った乗車をしているユーザーがいます。
そのため片方だけの出稿だと、もう片方に乗車するユーザーにリーチが出来ないため、定期的に両社をズラして出稿することで、満遍なくリーチが出来ることになります。

中期的にタクシーサイネージに出稿している企業は後者の狙いで出稿することが多いです。

また、短期的に認知を獲得したく、全面的にリーチを獲得する場合には
「GROWTH +TokyoPrime」と特定の期間、同時期に合わせて実施するパターンもあります。

いずれにせよ、どちらかの媒体だけだと機会損失になるため、
両社バランス良く出稿することを推奨します。予算が物理的に限られている場合は、ターゲットが都内中心=GROWTH、ターゲットが全国の場合=TokyoPrimeという選択が無難です。

予算感にもよるので、代理店や弊社に相談し、出来るだけ目的にあったプランニングを行いましょう。

メニューの選定

乗車直後の枠(TokyoPrimeであれば1stAds、GROWTHであればFIRST VIEW)が人気で優先的に埋まりますが、その後の枠では駄目なのかという相談を受けることがあります。

乗車時間は人それぞれですが、短時間の乗車でも必ず見る機会があるため、乗車直後の方の
枠の方が絶対リーチが高く、視認率も高い傾向にあります。よって単価も予算も大きくなります。

ただ、FIRST VIEW、1stAds以降のメリットもあります。
乗車直後は、スマホを触ったり、運転手さんとのコミュニケーションにより、集中して広告に接触しない人もいます=乗車して一定時間経ったタイミングで、初めてサイネージを見るという人にとってはFIRST VIEW、1stAds以降の方がじっくり見る場合もあります。

必ずしも、FIRST VIEW、1stAdsでなければいけないということはなく、
その後も乗車していることには変わりなく、他の媒体より高い視聴率で広告を見てもらえます。

また3rd Ads、ECONOMYVIEWに関しては、長い乗車時間の場合、2回以上掲示されます。
同一ユーザーに同じタイミングで2回以上当てたくないという場合は避ける方が良いかもしれませんが、逆にフリークエンシーを短期間で稼げるため、早い段階で認知を高めることが可能です。

【TokyoPrime】3rd Ads:2rd Ads(発車から 3〜10本目)の後
【GROWTH】ECONOMYVIEW:BUSINESSVIEW(発車から 2〜7本目)の後

あえて低予算、低単価で実施したい、限られた予算で出来るだけ認知よりも接触数を増やしたいということであれば、3rd Ads、ECONOMYVIEWも推奨できます。

タクシー広告で効果的なクリエイティブとは

タクシーサイネージ広告のクリエイティブで押さえておくべきことを解説していきます。
枠だけに頼っても結果は出ません。何を伝えるかが最終的に重要になります。

サービスが何者か、便宜を印象づける
まず前提として、こんなサービスです、こんなことが出来ます、それだけだと片手落ちです。
そのサービスや商品が何が、誰の何を解決出来るかが伝わることが重要です。

こんなサービスなんです!では、ユーザーは行動しにくい時代です。
大前提で商品を認知してもらわないと始まらないとはいえ、商品認知と同時にいかに短時間に自分に関係あるかもしれない、自分の課題を解決してくれるかもしれないと思わせることです。

分かりやすい例を挙げると、コロナ禍の時に見られたCMで、
単に「クラウドサービスです!」と言っても、それ自体に何の価値もありません。

クラウドサービスだから「時間や場所を問わず利用できる、コストが抑えられる、運用管理の負担が
削減できる、データ共有が簡単にできる、容量の拡張が柔軟にできる、導入後すぐに始めることができる」といったことが便益であるため、それを伝える必要があるのです。

TVのスポットCMで多くある15秒尺と異なり、タクシーサイネージ広告は30尺秒であるため、
その30秒で如何にテンポ良く、その便益が伝わるようにするかが大事になってきます。

まず分かりやすい、強いメッセージを作る
これは気づきを与え、何が変わるのかをイメージさせるためのものです。つい、色々伝えたいがために色々見せて、話してしまうことがあります。出来るだけ強い記憶に残りやすいメッセージ、ストーリーの開発が必要です。

後述しますが、ありきたりの構成は分かりやすく失敗しにくい一方で飽きられて効果の影響が出にくい傾向もあるため、フラットにメッセージは考えましょう。

自社としては「こうだ」ということも、ユーザーは他社サービスの広告にも触れている前提で伝える必要があります。

サービス名、商品名の記憶
これは検索、社内検討、購入などの行動につなげるためです。
いかに良いなと思っても、何と言うサービスだったかの記憶に残らないと、その後のアクション率が下がります。サービス名がそもそも読みにくい、聞きにくい、見にくいというのは多くの場合機会損失でしかないため注意しましょう。

サービス名、ネーミングを決める際の4箇条

・プロダクト開発と同時にネーミングは決める
・あると良いな、話題化の視点からネーミングは決める
・顧客に関係がありそうな視点からネーミングは決める
・使うイメージを想像できるネーミングにする

このサービス名を適切に30秒の中で伝えます
演者が言う、NAが言う、テキストで見せる、検索を誘発する際のワードで伝えるなど、手法は限られます。

サービス名を連呼して印象を与えることは必要である一方、何回も連呼したらしつこいですし、
そもそも便益が伝わっていないのだとしたら、無駄に尺を取るだけです。多くとも連呼は4回未満が良いでしょう。

ターゲットは誰かを明確にし、そこに集中する
他CMや競合に埋もれないために、自社のロイヤル顧客は誰かを実績より明文化しておきましょう。
その上で、全ての人には刺さらないものの、自社にとって顧客となり得る人の態度変容を促す訴求に集中しましょう。

意味ある演者の起用と演出
認知、残存効果への寄与を考えると、著名人を起用するのは悪くありません。
特に広告認知スコアはタレントを起用する方が高い傾向にあります。

ただ、toBの場合、特に慎重になる必要があります。
一時期「芸人起用」「踊ってポーズ」がトレンドとなりましたが、初期にそのフォーマットを
開発した企業は、それで効果が出たものの、似たクリエイティブが乱立しました。

結果「◯◯さんが出ていたCMだよね、見たことある」という広告認知は獲得出来たものの「それ何のサービスだっけ?」という認知が滞ることがとなりました。

さらに、ビジネス職から遠いイメージのタレントだと、見た人にとっては自分ごとにしにくいです。

結果、タレントキャスティングで、1クールで500〜2,000万円という投資をするものの、その活用方法によっては、投資の回収に時間がかかることとなります。

よって十分に予算があったとしても「実際にサービスを使っていそう、サービスを使っていなくとも、
伝えたいメッセージを伝えるのに適したイメージである、toBであればオフィスにいそうな優秀な社員の雰囲気」といった演者を起用するのが無難です。

有名ではなくとも、演技が出来るタレントです。
有名すぎると、逆にそのタレントイメージに引っ張られ過ぎることを頭の片隅においておきましょう。

シンプルな構成例(toB版)

「共通のお悩み」を課題として提示して共感を獲得→その上で、自社サービスを
「悩み解決の『必需品』」として打ち出し「乗り遅れる危機感」を煽る→さらに信頼、安心感としてエビデンスの提示です。

3つくらいtoB企業の例を挙げます。

◯例:A
増える退職者→組織の課題をデータで可視化→組織改善には『サービス名!』

◯例:B
経理社員のストレス→自動で申請ミスをチェック→累積導入社数No.1『サービス名!』

◯例:C
LTVを上げるなら!あれもこれも面倒…→誰でも、簡単、『サービス名!』→業界シェアNo.1のデータマーケティングツール

ただ、これも似たようなものが乱立すると認知が
埋もれるケースがあるため、あくまで自社にとって何がベストかを考えましょう。

正直、こんな時には出稿する、しない

広告主で出稿担当者の方30名に行ったインタビュー結果の、こんな時にタクシーサイネージ広告を出稿する、しないというケースを5つずつ紹介します。

出稿に至った背景
①資金調達後、早い段階で認知を獲得する場合(TVと合わせる)
資金調達の目的である採用費、マーケティング費用として、マーケティング費用の一部を
タクシーサイネージ広告に当てるケースがあります。理由は一定期間で認知を獲得し、サービス、商品の売上につなげていくためです。

②ターゲットが都内中心のビジネスパーソンの場合
toB企業に多いパターンです。ターゲット企業数や本社が都内に多く、トレンドも都内から発信されるのが通例であります。必然とそれらのターゲットはタクシー利用者が多いためです。

③競合よりシェアを獲得したい場合
効率も大事ですが、時間軸としてマーケット内で競合シェアを獲得することも企業によっては重要な事業グロースに繋がります。そのシェアを獲得するため早期に認知を獲得するためです。

④TVCM出稿の予算までは無い場合(クリエイティブテストを兼ねて試しで実施)
地方エリアならまだしも、いきなり関東でTVCMを実施するとなると、700GRP(最低出稿目安)でも、
5,000万円程度必要となります。よって、まずはテストトライアル的にCMを実施したい、クリエイティブが効果的だと判断したらTVCMも出稿したいという場合に、まずはタクシーサイネージ広告から、という企業もおります。

⑤トップダウン(社長、株主)が周りがやっているからという理由
特にベンチャーの代表や、大手企業の役職者はタクシー利用率が高く、他社の広告を見る機会も多くあります。そこで他社を意識したり、自分のような意思決定者にリーチするためには、同様の環境に出稿すべきであるという意識となり、それが自社の投資におけるきかっけとなるためです。

出稿に至らない理由
①マスメディアとして利用したい時
タクシーサイネージ広告はTVCMとは違い、リーチ数も取れるとはいえ、大型マスキャンペーン(マジョリティ層=不特定多数にリーチしたい)場合には、若干効率が落ちます。万人がタクシーに定期的に乗車するわけではないためです。

②ダイレクトレスポンス目的の場合(CPAをKPIとする)
ベンチャー企業、デジタルマーケティング担当はCV、CVR、CPA、短期的ROIを見ます。
またトラッキングがしにくいという面で、タクシーという媒体は優先度が下がることがあります。

③より詳細なターゲティングを行いたい場合
エリアや性年代属性のターゲティングは出来るものの、興味関心や行動履歴を元にしたターゲティングがどうしても必要な場合です。
(それは、そもそも第三者デバイスでは困難でもあるので、デジタル広告一択になります)

④継続的予算がない場合(100万円程度)
トライアルで出稿する企業は多いですが、トライアル費用が極端に少ない場合、
1週間だけ効果ありきではなく、予算ありきのミニマム出稿の場合は、影響が十分に出にくいため出稿に至らないケースがあります。これは一定のリテラシーがある場合です。

⑤トップダウン(社長、株主)を説得できない場合
トップダウンとは逆に現場担当者やマーケティング責任者が出稿したい、出稿すべきであると提言、上申しても、その材料やシミュレーションが不足しており、却下されることがあります。今後の継続的な課題と言えましょう。

以上

MADSはタクシーサイネージ広告のバイイング、プランニング、クリエイティブ制作全てに携わっており、特にバイイングにおいては広告主様、広告代理店様に貢献出来ることが多いです。是非ご相談ください。

Share on
URLをクリップボードにコピー

分析結果をもとにターゲティング
最適な配信パターンへ調整し、
広告効果を最大化

マイケル高橋

マイケル高橋

株式会社MADS CMO。マスマーケティング、コミュニケーションデザインを主軸とし、上場企業の顧問等も担う。Google SaaS Day 2020年登壇。NIKKEI BtoBマーケティングアワードファイナリスト。

株式会社MADS CMO。マスマーケティング、コミュニケーションデザインを主軸とし、上場企業の顧問等も担う。Google SaaS Day 2020年登壇。NIKKEI BtoBマーケティングアワードファイナリスト。

関連の記事